ミレーナとは
ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)は、重い生理痛、生理不順などの改善効果が高く、挿入すると最長5年間、何もせずにピルよりも高い避妊効果が期待でき、副作用も大きく抑えられるという特徴があります。
子宮内に軟らかいプラスチックでできた「T」のような形状の器具を挿入します。この器具には黄体ホルモンの成分が配合されており、少しずつ持続的に成分が出続けて最長5年間効果を得られます。ピルのように飲み忘れを起こす心配もなく、ホルモンの影響は子宮内だけに留まりますので、血栓症のリスクもありません。現在可能な避妊方法では、最も信頼性が高く、コストパフォーマンスが優れているとされています。なお、妊娠を希望される場合にはミレーナを抜き取ることで挿入前の状態へ自然に戻り、妊娠が可能になります。
ミレーナは過多月経や月経困難症に対する治療目的で行われる場合には健康保険が適用されます。
こんな方にミレーナをお勧めしています
- 生理痛が重いなど、月経困難症に関するお悩みがある
- 経血量が多い、レバーのような塊が出るなど過多月経がある
- 経腟分娩を経験している。（※未産婦の方にも対応しています）
- 妊娠を希望しておらず、信頼性の高い避妊方法を希望している
- 次の出産まで、少し期間が欲しいと考えている
- ピルの副作用がつらい
-
ピルを服用しているが、薬を飲み忘れたことがある
- 30歳後半以上で血栓症のリスクがあってピルの服用ができない
- 高血圧・BMI30以上、喫煙習慣があるなどでピル処方を受けられない
ミレーナ挿入の流れ
1ご予約
お電話またはWEB予約をお願いします。
2ご来院・問診
ご予約時間の少し前にご来院頂き、受付にお声がけください。月経困難症や過多月経など治療目的でミレーナによる治療を受ける場合は保険適用されますので、保険証をご提示ください。また、薬を処方されている場合にはお薬手帳をお持ちください。
3問診票記入
事前にお済みでない方はWEB問診をご案内します。
4検査・挿入
問診でお話を伺った上で、ミレーナについて分かりやすくご説明します。気になることがあれば些細な内容でも遠慮なくご質問ください。
子宮や卵巣の病気の有無を確かめるために、子宮がん検診、超音波(エコー)検査を行います。問題がなければ、ミレーナを挿入します。ただし、子宮筋腫や子宮内膜症といった疾患がある場合は、ミレーナの挿入ができないケースもあります。また、月経の周期によっては日をあらためて来院していただくこともあります。
5会計・処方
診察後は、会計の準備ができるまで待合室で少しお待ち頂ききます。準備ができましたら会計後、ご帰宅となります。
6定期検診
挿入から1か月後、3～6か月後、1年後に定期検診を受ける必要があります。超音波(エコー)検査でミレーナの位置や状態を確認し、出血状態や体調変化などについて伺います。
費用
避妊目的の場合は、保険適用されずに全額自己負担となります。
月経困難症や過多月経の治療として行う場合には健康保険が適用され負担額が軽減されます。
挿入時期・方法
ミレーナは生理開始日から7日以内のタイミングで挿入する必要があり、生理の経血量が減少する4～7日までの期間を推奨しています。
産後の挿入の場合、出産でダメージを受けた子宮の状態が回復するのを待って挿入となりますので、出産の3～4か月後以降に行います。なお、授乳中の場合にはもう少しお待ち頂くなど、状態に合わせたタイミングで挿入します。
ミレーナ挿入の所要時間は、5～10分程度です。
挿入後の注意点
当日の入浴はできませんが、軽くシャワーを浴びる程度でしたら可能です。
効果
ミレーナからは持続的に黄体ホルモン(レボノルゲストレル)の成分が放出されており、それによって子宮内膜の増殖が抑制され、子宮頚管の粘液の質が変化するなどの作用が起こり、それによって信頼度の高い避妊や過多月経・月経困難症など生理に関係したトラブルを緩和させる効果を期待できます。
避妊
女性は毎月卵巣から排卵があり、授精した卵管が着床できるよう子宮内膜を増殖させて厚くします。妊娠が起こらないと子宮内膜は剥がれて生理になります。ミレーナが放出している黄体ホルモン(レボノルゲストレル)には、子宮内膜の増殖を抑える効果があり、受精卵の着床を防ぎます。また、子宮の入口に当たる子宮頚管の粘膜の質を変化させることで子宮内へ精液が入らないようにします。こうした効果により、高い避妊効果が期待できます。
過多月経・月経困難症の
症状解消
子宮内膜の増殖が抑えられますので、子宮内膜が薄く、生理で剥がれても経血量が大幅に抑えられ、生理痛も軽くなります。
更年期障害に対する
ホルモン補充療法としても有効
女性は閉経を迎える更年期になると、女性ホルモンの分泌が大きく揺らぎながら低下し、それによって様々なつらい症状を起こしやすくなります。更年期やプレ更年期には、黄体ホルモンを補充できるミレーナをHRT(ホルモン補充療法)として活用し、エストロゲンの入った塗るタイプのジェルを併用することで効果的な治療が可能です。
ミレーナのメリット
何もせずに長期間の効果が
期待できる
避妊や生理に関係したトラブルの解消に低用量ピルやホルモン剤と同等以上の効果を期待でき、挿入すると最長5年間、効果が持続します。
飲み忘れなどもありませんので、安心して過ごせます。
高いコストパフォーマンス
現在可能な避妊方法を比較すると、ミレーナは最もコストパフォーマンスが高いとされています。薬を服用する場合、毎月の処方にも費用がかかりますが、ミレーナは挿入してしまえば定期検診のみですので有効期限の5年間で比較した場合には費用を抑えられます。
ピル服用ができない場合にも
可能
40歳以上（慎重投与）、血栓症のリスクが高い、1日15本以上の喫煙習慣がある、高血圧、BMI30以上などの場合、低用量ピルの処方はできません。服用することで消化器官を通じて吸収されるピルの成分は全身に影響を及ぼしますが、ミレーナは子宮内の狭い範囲にのみ影響を及ぼすため、ピル服用によって生じる可能性がある深刻な副作用を起こすリスクも大幅に軽減されます。ただし、ミレーナにはピルと異なる特有の副作用を起こす可能性がありますので、リスクと効果を考慮して検討しましょう。
副作用
挿入後の数日間は、下記のような副作用を起こす可能性があります。
症状の多くはいずれ解消へ向かいますが、長く続いて治まらない、強い痛みや大量の出血などがありましたら、速やかにご連絡ください。
- 下腹痛
- 生理の出血
- 不正出血
- 月経周期のずれ
- 8日以上生理が続く過長月経
- 腰痛
など
不正出血
ミレーナで起こる代表的なトラブルに生理以外の時期に起こる不正出血があります。ミレーナの効果で経血量の減少や生理痛は緩和・解消されますが、身体が子宮内の黄体ホルモンの高い濃度に慣れるまで不正出血が続く傾向があります。期間には個人差がありますが、1か月に満たないケースから6か月以上になる場合もあります。当院では、有効期間である最長5年のうち、最初の数か月は不正出血があると最初から考えて検討するようお勧めしています。
位置のずれと検診
ごく稀にしか起こりませんが、ミレーナがずれて外に出てしまうケースもあります。挿入後は定期的に受診して検診を受け、位置や角度などを超音波(エコー)検査で確認する必要があります。3～6か月の頻度で検診を受け、最終的には1年に1回の頻度での検診となります。なお、違和感などがある場合は、検診の時期ではなくても早めに受診してください。
ミレーナとピルの違い
ミレーナ
- 挿入すれば何もしなくても安定した効果が最長5年間続く
- 薬の効果を得たい子宮内に限定して効果が生じ、他の器官に影響しない
- 卵巣の働きは変化せず、自然な排卵が起こる
- 喫煙や疾患、服用している薬の影響を気にせずに使用できる
- 血栓リスクが上昇しない
- 体調の変化が少ない
ピル
-
飲み忘れなどで突発的に避妊効果を得られなくなることがある
- 身体全体に薬の効果が及び、副作用のリスクがミレーナに比較すると高い
-
排卵が起こらなくなる
※服用を中止すると排卵が再開される - 喫煙や肥満症、既往症、他の薬の影響により処方できない場合がある
安心感のあるミレーナ
卵胞ホルモンと黄体ホルモンが配合されたピルと異なり、ミレーナには黄体ホルモンのみが含まれていますので、血栓症を起こす心配がありません。血栓症のリスク上昇を考慮してピル処方を受けられない方でも、ミレーナであれば血栓の心配をせずに安心して治療を受けられます。
よくある質問
ミレーナを挿入する際に痛みはありますか？
経腟分娩を経験した方の場合、ほとんどは問題なくスムーズに挿入できます。経腟分娩の経験がない場合には、挿入が難しくなることがあり、多少の痛みを生じる場合もあります。
ミレーナはどの程度の避妊効果がありますか？
避妊効果は100%ではありませんが、正しい位置に挿入した場合、1年間に妊娠する確率(避妊失敗率)は0.2%となっています。これまで高い避妊効果を得られるとされてきたOC(低用量ピル)は飲み忘れをせず理想的な服用を行って0.3%、飲み忘れがある程度の一般的な服用では8%とされています。コンドームの場合、性交渉の最初から最後まで正しく装着した場合に2%、一般的な装着では15%とされていることから、ミレーナは最も信頼度の高い方法だと言えます。また、ミレーナは挿入してすぐに避妊効果を得られることもメリットです。 ただし、ミレーナには性感染症の予防効果はありません。性感染症予防を考慮する必要がある場合には、必ずコンドームを正しく装着する必要があります。
ミレーナ挿入後、性交渉が可能になる時期はいつですか？
また、どのような影響がありますか？
挿入後から1週間程度、性交渉を控えて頂きます。状態などにより、それよりも長く制限される場合もあり、個人差がありますので挿入の際にご相談ください。また、ミレーナの挿入による性交渉への影響はありませんが、違和感が生じた場合には位置のずれなどが起こっている可能性がありますので、速やかに受診してください。