子宮筋腫
子宮にできるコブ状の良性腫瘍で、女性ホルモンの影響を受けて大きくなり、閉経を迎えると縮小します。重い生理痛や貧血などを起こすこともありますが無症状のまま大きくなるケースもあります。急激に巨大になる悪性の子宮肉腫の可能性も考慮し、疑わしい場合には受診して診断を受け、定期的に経過を観察することが重要です。
症状
重い生理痛を起こす月経困難症、出血量が増加する過多月経などを起こし、頻脈・息切れ、立ちくらみといった貧血症状を伴う場合もあります。ただし、自覚症状がないまま筋腫が大きくなっていくケースも存在し、しこりとして触れて初めて発見されることもあります。子宮の外側に筋腫が生じる漿膜下筋腫は症状を起こしにくく、子宮の内側に生じる粘膜下筋腫はサイズが小さくても過多月経などを起こしやすい傾向があります。
良性腫瘍ですのでサイズが小さく症状も起こさない場合には経過観察をする場合もありますが、悪性の子宮肉腫が生じる可能性がありますので定期的な受診が重要です。特に、急にしこりが触れるようになった、出血が続くといった症状がある場合は、定期的な受診のタイミングではなくても速やかな受診が必要です。
治療
筋腫のサイズや状態、発生した場所、症状、将来の妊娠を希望しているなどライフステージやライフスタイルを考慮し、患者様と相談して薬物療法や手術といった治療方針を決めます。手術を行った場合は、摘出した筋腫の顕微鏡検査を行って確定診断を行います。
卵巣腫瘍
卵巣に生じる腫瘍の総称で、発生した場所によって多くの種類に分けられ、それぞれ良性腫瘍・境界悪性腫瘍・悪性腫瘍があります。嚢胞性という袋状の卵巣腫瘍は良性の可能性が高いとされており、超音波(エコー)検査である程度の判断ができます。ただし、最終的には手術で摘出した腫瘍の病理検査によって確定診断されます。卵巣腫瘍では悪性が全体の10~20%程度とされています。卵巣がんの罹患率ピークは50歳ですが、15歳頃から罹患率が上昇し始めますので、若い方から高齢の方まで幅広い年代に発症する可能性があります。
症状
腫瘍が小さいうちには自覚症状がほとんどなく、腫瘍が大きくなった際の主な症状は生理痛です。卵巣は2㎝程度の臓器ですが、卵巣腫瘍は20㎝以上になることもあり、サイズが大きくなると周囲の臓器を圧迫して膨満感、下腹部痛、腰痛、便秘、頻尿、むくみなどの症状を起こします。さらに進行すると腹水や胸水が溜まり、体重減少や呼吸に支障が生じるなどが起こることもあります。また、卵巣腫瘍の付け根がねじれる卵巣腫瘍茎捻転や、腫瘍の一部が破綻すると急激に激しい痛みを起こすことがあり、その場合には緊急手術が必要になります。
治療
超音波(エコー)検査、腫瘍マーカー検査、MRI検査を行った上で、総合的に判断して治療方針を決めます。悪性腫瘍が疑われる場合には、手術で腫瘍を取り除いた上で摘出した腫瘍の病理検査を行って確定診断となります。また、良性の場合も腫瘍サイズが6㎝以上の場合、卵巣腫瘍茎捻転を起こすリスクが高いので早めの手術が必要です。さらに、良性でサイズが小さくても定期的に経過を観察し、手術が必要になる場合があります。手術が必要と判断された場合には、連携している高度医療機関をご紹介しています。
子宮内膜症
子宮内膜は、受精卵が着床するための組織で、排卵後に増殖し、着床がないと剥がれて生理になります。子宮内膜症は、本来は子宮内膜が存在しない卵巣や卵管、子宮周辺の腹膜などに子宮内膜やそれに似た組織が増殖してしまう疾患です。生理周期に合わせて増殖、出血を繰り返し、重い生理痛などの症状を起こします。
生理の際に剥がれた子宮内膜の一部が卵管を逆に進むなどして広がり、そこで増殖すると考えられていますが、はっきりとした原因はまだ分かっていません。
卵巣に生じるチョコレート嚢腫、子宮筋層内に生じる子宮腺筋症などがあり、チョコレート嚢腫は良性ですが、悪性に変わる可能性もありますので注意が必要です。
症状
重い生理痛が主な症状です。年々、生理痛が重くなっていく場合、子宮内膜症が疑われます。また、生理周期とは関係なく、骨盤内に激しい痛みを生じる場合は子宮腺筋症が疑われます。他にも月経過多などの症状を起こすこともあります。
治療
患者様の状態や将来の妊娠を希望されるかなどのお考えを伺いながら、適切な治療方針を相談して決めています。治療の選択肢には、手術、子宮内膜症治療薬や低用量ピルなどによる薬物療法、黄体ホルモン子宮内放出システムの装着などがあります。手術を選択された場合には、連携している高度医療機関をご紹介しています。